音楽的な面から解析をするならば、極東ロマンスの織りなす楽曲たちは昭和歌謡を彷彿とさせるクサメロ(むろんこれは褒め言葉だ)が活きたキャッチーなニュアンスと、そのスタイリッシュな風貌からは想像し難いほどにラウドでいてダイナミックなバンドサウンドが主軸をなしている。だが、そこは極東ロマンスというバンド名の醸し出すイメージもあいまって、聴き手に対し甘美な陶酔感とヤミツキになってしまいそうな中毒感を同時に与えるものとして成立しているあたりも、実に興味深い。
なお、今宵のライブでは第2弾配信曲であるハード&エッジーな「Cyber Lover -仮想世界の女神-」や、オーディエンスがシンガロングする場面が垣間みられた第3弾配信曲「Light Your Fire」をはじめとして、7月24日にリリースされたデビューアルバム『0 -ZERO-』からの楽曲たちが演奏されていった。中盤ではTetsufumiによるワイルドなドラムソロも挟みつつ、本編ラストではShindyが「これはみんなの為に作った曲です」と述べて「ファティマ」を披露。<あの日描いていた 夢はいつも 君のそばに いるよ>と歌いあげ、ここからの未来に向けた極東ロマンスとしての所信表明を示した。
アンコールでは再度の「Black Rain」を含む3曲を派手にブチかまし、我々はこのライブを通して初っぱなから極東ロマンスの真髄を存分に味わうこととなった。
とはいえ、今回のライブは彼らにとっての単なる第一歩にしか過ぎない。今夏はこれまた全カ所がソールドアウトになった初東名阪ワンマンツアーを行うことになっているほか、急遽10月からは都内での3ヶ月連続ワンマン公演『3 Steps to the ultimate BLACK』も開催。これはそのタイトルに示されているように“究極の黒”をコンセプトに掲げ、目論見としてはライブバンドとしての鍛練を重ねながら、いわゆるホップステップジャンプ的な飛躍を果たしてゆく場にしていきたい、とのことである。
何にも染まらない揺るがぬ色であると同時に、いかなる色ともコーディネートしやすいフレキシブルな特性を持った色が“黒”であることを考えると……ここからの彼らは序章を経た新章へと突入しながら、さらに多彩で奥深い世界を刻々と描いていってくれるに違いない。なにしろ極東ロマンスという名のこの壮大であらたな物語は、今まさに始まったばかりなのだから。
取材・文=杉江由紀
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