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ひらりさんのレビュー
生きる伝説がオラが町さいたまに降臨。バンドは音の疾走感が尋常じゃないし、歌は巨大な教会で司教の説教を聞いているかのような説得力。こんなもの浴びせられたら、今後観るライブに求めるハードルがとてつもなく高くなってしまうわい。
U2が13年ぶりの日本公演となる「ヨシュア・トゥリー・ツアー2019」を行った。U2が1987年にリリースしたアルバム『ヨシュア・トゥリー』の30周年記念として2017年にスタート。北米、ヨーロッパ、南米で270万人以上を動員し、同年で最も成功を収めたツアーの2019年バージョンです。アルバム『ヨシュア・トゥリー』の完全再現に加え、彼らの全キャリアから名曲の数々が演奏されるという夢のようなセットリストが披露されるとあって、公演決定の報を受けて即時にチケットを購入。手にしたチケットは「前方スタンディング/Aブロック」というステージに接した神エリアでした。
ライブは「サンデイ・ブラッディ・サンデイ」でスタート。イントロのドラムを聴いて瞬時に興奮が沸点を叩いてしまった私なのですが、ヨシュア・トゥリーの木の形をしたサブステージで演奏された初期の名曲たちは、いずれもレコードの溝が擦り切れるまで聴いてきたにもかかわらず、魅力がまったく色褪せないどころか、従来以上の感動をもたらしてくれるのだから、このバンドが持つ力量に感嘆せずにはいられません。そして、メインステージに向かってメンバーが花道を歩き出すと、ヨシュア・トゥリー・パートの幕開け。「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネーム」のイントロが鳴り始め、ステージ背後に設置された巨大スクリーンが真っ赤に変わって、ヨシュア・トゥリーの下に4人のシルエットが浮かぶ神演出。あぁ、なんて神々しいのでしょう。
今夜のライブではこの巨大スクリーンが非常に効果的でした。『ヨシュア・トゥリー』の各曲に充てられた映像はそのどれもが印象深いインパクトのある代物ばかりで、聴覚だけでなく視覚からも彼らの強いメッセージがビンビン伝わってきます。「人は全員が平等になるまで誰も平等ではない」なんて言葉も映し出されたのですが、普段なら赤面モノの文章ですら素直に頷けてしまうのですから、その訴求力たるや凄まじい威力。MCでも「日本の子供ために平和を思いを。世界へ向けて平和と感謝を」といったメッセージを話していたのですが、「ウルトラヴァイオレット」の演奏時に、話題となっているグレタ・トゥーンベリやエマ・ゴンザレスといった若い活動家、日本人のオノ・ヨーコ、草間彌生、紫式部、川久保玲など、世界の最前線で活躍する女性を紹介した映像には、言葉を凌駕する力強さが感じられました。
アンコールの最後は個人的にも大好きな「ワン」をプレイ。終始絶えなかった場内の大歓声をまとうようにメンバーはステージを去りましたが、すべての観客がその場を立ち去り難く、名残惜しさを感じる素晴らしいライブに純粋に感動しました。許されるならば、明日の公演最終日もどうにかして参戦したい。(会社休めないけど...)
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- 2020/10/25 (日) 02:21
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