サザンオールスターズが6月25日にデビュー40周年を迎えた。その記念すべき40周年イヤーの幕開けとして、6月25日(月)、26日(火)の2日間、NHKホールで〈
サザンオールスターズ キックオフライブ2018 「ちょっとエッチなラララのおじさん」〉が行なわれた。
NHKホールの収容人数は3700人、2日間で7400人しか入らない。それに対して応募者数は切りがない。ということで、応募が殺到したためか、チケット当選者は1人1枚に限定された。つまり、それだけプラチナ・チケットだということだ。
「ライブ・ビューイングとテレビの違いは何か?」 見たいけど手に入らない。となると、なおさら見たくなる。なんとかならないのか、ということになるが、かといってキャパシティーは7200人と席に限りがある。そこで今回採用されたのが〈ライブ・ビューイング〉なる最近スポーツを中心に人気のある新しい楽しみ方である。
NHKホールに〈ライブ・ビューイング〉専門のカメラが入り、NHKホールでのコンサートをそのままライブ中継にして、映画館の大画面で見るというもの。スポーツ中継では生のライブを自宅のテレビで見るということはあたりまえのことだが、音楽に関してはそうあるものではない。もちろんWOWOWあたりではライブの生中継を行なっているが。ではテレビで見るのと映画館のスクリーンで見るのではどう違うのだろうか?
今回、私はこの〈ライブ・ビューイング〉を東京のTOHOシネマズ日比谷で見たが、正直に言って体験できてよかったと思う。何が良かったかというと、大画面の迫力、これはテレビでは不可能と言っていいくらいのインパクトがある。また、音響の素晴らしさ。これもテレビではとうてい作り出すことはできないものだ。つまり、視覚と音が完璧だということ。
あとは、その場の“臨場感”が出せるかどうかということだが、はっきり言ってこれは“その場”に居あわせるというリアリティーには勝てない。では、バーチャル・リアリティーをいかに出せるかということだが、〈ライブ〉という事実がバーチャル・リアリティーを生み出していると私は思う。その場には居合わせていないが、リアルタイムに見て聴いているので、なぜかリアリティーがあってハートをときめかせてくれるのだ。
ライブということは、何が起きるかわからないというハプニング性がある。そんなことを考えると、〈ライブ・ビューイング〉の価値はそんな一瞬を共感できる感動かもしれない。
「サザンオールスターズの40年を2時間半に凝縮したNHKホール・コンサート!」
開演前にアリーナでもないのにウェーブが起こった。このウェーブを見た全国131の映画館で〈ライブ・ビューイング〉を見ていた7万人以上の観客が、アリーナ席に自分もいるのだ、と思ったに違いない。
そんな中で開演を告げたのは元NHKアナウンサー・有働由美子のMCだった。意外だったのか、観客がドッと湧いてお祭り気分は一気に爆発したのだ。
7時に始まったライブはアンコールを含めると2時間半余りで「いとしのエリー」「みんなのうた」など新旧とりまぜて25曲をそれこそノンストップで演奏してしまうパワフルさ。そしてアンコールのラストはサザンオールスターズの記念すべきデビュー曲「勝手にシンドバッド」をステージと客席が一体となって見事に同化した。これぞ40周年にふさわしい〈サザン祭〉と言っていい華々しさだった。
それにしても1978年6月25日にサザンオールスターズが「勝手にシンドバッド」でデビューしたとき、現在のサザンの姿を予想できた人は私を含めて誰もいないだろう。デタラメ英語と何を言っているかわからない詞、ランニング・シャツと短パンでどうせ“一発屋”だと見られていたサザンがまさかこれほどまでのスーパーバンドに成長するなんてわからないものである。
そんなことを思い出しながらサザンとリアルタイムに時を共有できる〈ライブ・ビューイング〉はこれからのライブ体験の重要なツールとなることは間違いないだろう。その意味では、有意義な経験をさせてもらった〈ライブ・ビューイング〉である。あなたも〈ライブ・ビューイング〉を一度体験してみて下さい。
3年余り〈富澤一誠のライブ・カルテ!〉をご愛読いただきありがとうございました。ライブの楽しさが少しでも伝わったとしたら幸せです。またお会いしましょう。ありがとうございました。
(文/富澤一誠)