第63回
〈おとこ塾〉でまずは自分を磨いてみよう!
2017/11/09
このイベント<おとこ塾>には4つのポイントがある。
①第一線を走る人物の経験談から得る「気づき」
言ってみれば「大人のサロン」だろうか。今年は既に2回行なわれていて、第1回は「男の浪漫~あなたの夢は何ですか?わたしの夢は……夢に向かい夢を紡ぐ想像力~」でレーシングドライバーの寺田陽次郎さんと東京水上倶楽部代表取締役/カナルカフェオーナーの羽生裕子さんがメインスピーカーを担当した。
続く第2回は「男の着想~不可能を可能に~」で千葉工業大学未来ロボット技術研究センター所長の古田貴之さんとパラ・パワーリフティング49キロ級日本記録保持者/ロンドン・リオパラリンピック日本代表の三浦浩さんがメインスピーカーを務めた。
「友達が誰ひとりとして変わらなかった。それが大きな力となった!」
そして第3回が「男の挑戦~挑み続ける理由」ということで、メインスピーカーを担当したのが、ヴァイオリニストの増田太郎さんと、手前みそで恐縮だが私、富澤一誠。
知り合いから〈おとこ塾〉のオファーがあったときに私はこのイベントのことを知らなかったが、その趣旨を聞いて「面白い」と思ったのですぐに引き受けることに決めた。なぜか? その趣旨に賛同したからだ。
一口で言えば、最近の男は草食系か何か知らないが、ぴしっとしていなくて情けない。はたしてこのままでいいのか? と感じているのは私だけではないだろう。具体的に言うと、以下のようなことになる。
日本におけるニート人口において男性の構成比率が高い。少子高齢化、若者の労働人口の低下=日本の未来の労働力の低下。しかも男性におけるニートの比率が増加し、さらに労働力人口も低下している。ということは、男性の資質低下に課題があるといえる。加えて日本の若年層の死因において、自殺は20パーセントと最も多く、他の先進国と比べて2倍以上の比率となっている。
女性の2倍以上の男性が毎年自殺しているのも気にかかる、などなどだが、一口に言ってしまうと、男は大丈夫か? もっとしっかりしろよ。そんなことを言って、男を鍛えるというのが〈おとこ塾〉というわけである。私もかねがねそう思っていたので、その趣旨に共感してメインスピーカーを引き受けた、というわけだ。
内容は〈第1部〉〈第2部〉に大きく分けられていて、まずはメインスピーカーである増田太郎さんと私のプロフィールを中心とした人となりの話から入ったが、後は進行役ともいうべきファシリテーターの井上義則さん(八芳園取締役専務総支配人)仕切りによるフリートークである。
増田太郎さんのお話には共感を覚えることが多かった。彼は5歳よりヴァイオリンを始めるが、もともと弱視であったために徐々に視力を失い、20歳のときに失明をしてしまった。さぞ不安なことだったと思うが、それを乗り越えられた大きな要因として、「友達が誰ひとりとして変わらなかった。それが大きな力となった」という増田さんの話には衝撃を受けた。そして、新たな歩みを始めて、彼は彼ならではのオンリーワンの道を進んできたというわけである。
「俺だったらこうするのに。誰もやらないんだったら俺がやる!」
〈第1部〉が終わり、食事タイムの後に、増田太郎さんの〈ミニライブ〉が行なわれた。これまでにも多くのヴァイオリニストを見てきたが、ヴァイオリンを弾きながら“歌う”というアーティストは初めてだったので「何だ、これは?」と思ってしまった。つまり、彼はヴァイオリンを弾き語るという誰もやったことのない新しい奏法をやっている〈オンリーワン・アーティスト〉だということ。そう思ったとき、私はここに来たことで、見ることができて良かった、と実感した。
とにかく、私は新しいことをやっている人が好きである。それは私の生き方がそうだからである。私は常に「俺だったらこうするのに……」と感じたことに対して、「誰もやらないんだったら俺がやる」というポリシーでこれまでやってきた。文句を言っていてもしかたがないではないか。面白くなかったら自分が面白いと思うものを作るだけだ。突きつめればそれが自分にしかできないことであり、オリジナリティーでありオンリーワンということではないだろうか?
「見る前に跳べ!跳んでみなければ何も始まらない」
20歳で視力を失った増田太郎さんは、失明したことを恨むのではなく、それを受けとめてその中で自分ができることを最大限に探し求めたからこそ、結果として自分だけの独自の世界を確立できたのだと思う。
再び手前みそになってしまうが、私は20歳のときに吉田拓郎の「今日までそして明日から」をラジオの深夜放送で聴いて衝撃を受けて、「俺も拓郎のように何かをやらなければいけない」と思い、せっかく入った東大を辞めた。ここにいても面白くない、もっと面白いことがあるはずだ、そう思ったからこそ〈見る前に跳んだ〉のだ。跳んだ結果、音楽評論家という天職にたどり着いたのではないだろうか。
面白くない、と思ったら、面白いことを探して、自分でまずやってみる。置かれた場所で咲きなさい、ではないが、与えられた場所でできることをする、とか、とにかくやってみないことには始まらない。男たちよ! まずはそこから始めたらどうだろうか? 夢は眠っていないか?だ。眠っている夢は実現できるわけがない。〈おとこ塾〉でまずは自分磨きを勧めたい。
(文/富澤一誠)
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