第62回
〈GARO青春の旅路〉は紛れもなくGAROのバーチャルユニットである!
2017/10/26
どういうことかというと、NSPの場合はメンバーの天野滋が亡くなっているので、天野、中村貴之、平賀和人による〈NSP〉の再結成はありえない。ふきのとうの場合は細坪基佳、山木康世が健在なので再結成はありうるが、現実には諸般の事情により難しい。ということは本来ならばNSP、ふきのとうとももうライブでは見られないということだ。
しかしながら、〈スリーハンサムズ〉の手にかかると、元ふきのとうの細坪、元NSPの中村、平賀の3人が集まると、なぜか〈ふきのとう〉ふうのユニットが、同じように〈NSP〉ふうのユニットができてしまうのだ。もちろんオリジナルではないが、限りなくオリジナルに近いライブが聴けるというわけだ。これを私は〈バーチャル・アーティスト〉と名づけたのだ。
そんな観点に立って、私は期待のできる〈バーチャル・アーティスト〉として〈GARO青春の旅路〉に注目したのである。
「学生街の喫茶店」で知られるガロはもうライブで見ることは不可能だ。トミー、マークは既に亡くなっているからだ。しかし、バーチャルではライブが見ることができるのだ。ボーカルこと大野真澄が〈GARO青春の旅路〉というユニットを結成したからだ。〈GARO青春の旅路〉とは、ライブでガロの曲だけを歌うこと。どうしてそんなユニットが生まれたのか?その背景を探ってみた。
「1970年代に青春時代を送った人たちにとってガロの『学生街の喫茶店』はまさに青春のテーマソングだった!」
1970年代に青春時代を送った人たちにとって、ガロの「学生街の喫茶店」は、かぐや姫の「神田川」、バンバンの「『いちご白書』をもう一度」と並ぶ“青春ソング3部作”と言っていい。
しかし、今でこそ名曲の誉れが高い「学生街の喫茶店」だが、もともとはガロにとって3枚目のシングル「美しすぎて」のB面だった。担当ディレクターの判断で、評判の良かった「学生街の喫茶店」をA面にして再発売したところ、73年2~4月にかけ、7週連続でシングルチャートの1位を獲得するほどの大ヒット曲となったのだ。
誰にでもある恋愛体験を、学生街の喫茶店を舞台にして、時の流れとともに綴った失恋ソングは、青春を生きる男と女のレクイエムだったからこそ、たくさんの人の心をわしづかみにしたのである。この歌を聴くと、青春時代の思い出が蘇り、胸がキュンとするという人は多いことだろう。
ガロは大野真澄(ボーカル)、堀内護(マーク)、日高富明(トミー)の3人で結成され、71年10月にシングル「たんぽぽ」、同年11月にアルバム「GARO」でデビューした。デビュー当時から、ガロの評価は高かった。アコースティックギターとハイセンスのハーモニーを基調にしたリリシズムの世界は驚異的、とまで専門家筋に言われるほどだった。
今、昭和のフォークが改めて人気を呼んでいるが、ガロのオリジナルな歌声は残念ながら聴くことができない。なぜならば、トミー、マークはすでに亡くなっているからだ。だからこそ、ボーカルに寄せる期待には大きなものがある。
「〈GARO青春の旅路〉とはライブでガロの曲だけを歌うこと!」
ボーカルはソロとして「学生街の喫茶店」を歌い続けてきたが、その彼が、ガロファンにとっては待ちに待ったアルバム「GARO青春の旅路 Vol.1」を発表したのだ。
〈GARO青春の旅路〉とは、ライブでガロの曲だけを歌うということ。そのきっかけとは?ボーカルは言う。
「マークが亡くなったときに、鈴木雄大君(シンガー・ソングライター)と太田美知彦君(作曲家)とユニットを組んで、ガロの曲をライブで歌ったんです。そうしたら、やっぱりガロの曲ってやってて気持ちいいのね。で、やろうと思ったんです」
そこから3人のユニットで歌うようになり、昨年6月に行われた長野県須坂市メセナホールでの〈フォーエバーヤング〉でも披露したところ好評だった。そんなこともあってか、ボーカルはライブで歌うともに今回、アルバムも発表したというわけである。
〈GARO青春の旅路〉では「学生街の喫茶店」「ロマンス」「美しすぎて」など代表曲が演奏されている。選曲の基準は「ハーモニーがメインの曲を、基本的には選んでいます」とボーカルは言う。
ガロならではの3声のハーモニーに限りなく近い〈GAROの青春の旅路〉、聴く価値は十分にある。マーク、トミーの分も背負って歌い続けていくことが、ボーカルに課せられた“使命”だ。
「時は流れてもガロは永遠に不滅です!」
〈GARO青春の旅路〉をきっちりと見てみたいものだと思っていたら、東京のラドンナ原宿でライブがあるということなので、10月19日(木)に行ってみた。会場は既に満席で開演前から期待感からなのか熱気がムンムンとしていた。正直に言って、こんなに盛り上がっているとは予想以上のことだった。
大野真澄と共に鈴木雄大(Vo. Gt.)太田美知彦(Vo. Pf. Gt.)細井豊(Key)が登場するともう学園祭のような雰囲気の盛り上がりだった。そんなふうに始まったライブは、ガロがアマチュア時代からプロの初期にかけてカバーしていたCSN&Yのナンバーを奏でると、それだけでもう大盛り上がりだ。
初期の頃、日比谷野外音楽堂で行われていたフォーク&ロック・コンサートに出ていた頃、ガロはCSN&Yのナンバーをコピーすると他の追随を許さないほど抜群に上手かった。そんな背景から生まれてきたのがデビュー・シングル「たんぽぽ」ファースト・アルバム「GARO」だった。デビューした当時、ガロの評価は高かった。そのため実力派ロック・バンドとして主に男に熱く支持されたのだ。そんな頃の雰囲気があってか、なぜか男性の拍手が熱かったようだ。
ボーカルが当時にまつわる話をしながらガロのオリジナル曲を歌うと、いないはずのトミーとマークが、なぜかステージにいるような異次元の感覚を抱いてしまったのは私だけではないだろう。つまり、それだけボーカル、鈴木雄大、太田美知彦の“三声のハーモニー”がガロに限りなく近いということだろう。
ガロはライブで見たいと思っても現実的には不可能だ。しかし、ガロの疑似体験は間違いなくできるのだ。ぜひ一度〈GARO青春の旅路〉を見て欲しいものである。
時は流れてもガロの「学生街の喫茶店」は永遠に不滅である。
(文/富澤一誠)
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