第54回
3組のアーティストの一期一会が織りなす極上のコラボレーションが〈フォーエバーヤング〉!
2017/06/22
当日のパンフレットに私は今回の趣旨をこんなふうに書いている
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3組の一期一会が織りなす“今”を堪能あれ!
〈フォーエバーヤング〉は須坂市文化会館メセナホールでしか見ることのできない〈歌とトーク満載のフォーク・コンサート〉です。なぜならば、3組のアーティストによる初めての組み合わせからなる独創的なコラボレーションで、〈フォーエバーヤング〉は須坂発のオリジナルなイベントで全国的にも類を見ないものだからです。12回目を迎える今年もまた加藤登紀子さん、きたやまおさむさん、白井貴子さんからなるオリジナルなコラボレーションをお届けします。もちろん3組による共演は本邦初となります。
加藤登紀子さんほど間口が広く奥行きの深いアーティストはいません。「ひとり寝の子守唄」「知床旅情」「灰色の瞳」「リリー・マルレーン」「百万本のバラ」などは単なるヒット曲を超えています。“いい曲”が彼女の新しい解釈で歌われると加藤登紀子という〈文化〉に昇華されてしまうからで、これはすごいことです。
きたやまおさむさんは私にとって特別な存在です。1971年、20歳のときに私は、きたやまさんが作詞した「戦争を知らない子供たち」(歌・ジローズ)と彼が書いた同名の単行本を知りました。「戦争を知らない子供たち」というキャッチコピーが戦後生まれを的確に表現していたことで、この歌はたくさんの若者たちの心をとらえました。つまり、きたやまさんのメッセージがたくさんの人々の共感を呼び、彼は“オピニオンリーダー”になったのです。「彼のようになりたい」と思った私は音楽評論を書き始めたというわけです。
白井貴子さんは1981年11月に「内気なマイ・ボーイ」でデビュー。84年後半には「Chance!」がヒットして“ロックの女王”の地位を不動のものにしました。あれから32年という年月が経ち、彼女は人間としても成長し“大人の歌”を生み出しています。私が提唱しているエイジフリー・ミュージックと共通するものがあります。
3組の一期一会が織りなす“今”を堪能あれ!
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「さくまひできのロビーコンサートからテーマソング「どこで暮らしていても」からスタート!」
ベルが鳴り幕があがり、私の挨拶から公演はスタート。まずはゲストの3人を紹介してから、恒例のオープニングはさくまひできの「どこで暮らしていても」。これは93歳で亡くなった母のことをテーマにして私が書いた詞に岸田敏志が作曲をして、それをさくまが歌うという〈フォーエバーヤング〉のテーマソング。今や恒例となっていてこの歌がないと始まらないと言っていいほどだ。
加えて、本編開演前にさくまは〈ロビーコンサート〉という30分ほどのミニライブを行っているが、今ではこれもすっかり定着してさくまの人気は大変なもの。アーティストのお宝や秘蔵資料を展示した〈フォーク資料展〉と共に〈ロビーコンサート〉はもはや〈フォーエバーヤング〉の必修アイテムになっているほどだ。
「フォークのレジェンド・北山修とロックの女王・白井貴子とのコラボレーション!」
トップバッターは白井貴子。彼女は1981年11月に「内気なマイ・ボーイ」でデビューして、84年後半には「Chance!」がヒットして“ロックの女王”の地位を不動のものとした伝説の〈ロックの歌姫〉だ。その彼女が去年の6月にアルバム「涙河」をリリースした。白井貴子が「北山修/きらやまおさむ」を歌う、というコンセプトのもとにコラボレーションしたのだ。
その評判が良かったので、今回は特別に、白井ときたやまで新曲「返信をください」とザ・フォーク・クルセダーズの隠れた名曲「コブのないラクダ」をコラボしてもらったところ大盛況だった。これぞ須坂市メセナホールならではの〈須坂マジック〉だった。
「歌手・きたやまおさむがすごかった!」
コラボの後はきたやまのソロ・ステージだった。これまできたやまはステージはやったとしても自分で歌うことはあまりしなかった。どちらかというと、作詞家、プロデューサーの立場としてふるまうことが多かったが、今度のステージにおいてはアーティストというか“歌手”としての部分が全面に出ていた。
はしだのりひことシューベルツの「風」、ジローズの「戦争を知らない子供たち」などをメインボーカリストとして歌い、独特の個性ある歌声を聴かせてくれた。正直言って、きたやまがこれほどまでオリジナリティーが豊かで個性がきわだった歌が歌えるとは驚きだった。
そして圧巻はきたやまと加藤登紀子のコラボレーションだった。きたやまが選曲したのはあの「帰って来たヨッパライ」だった。加藤とのコラボのために、数ある名曲をさしおいて「ヨッパライ」とは?想像ができないほどだったが、これが「すごかった」。こんな「ヨッパライ」聴いたことがないと思うほどファンキーで、「ヨッパライ」の新しい一面が感じられて素晴らしかった。きたやまと加藤のコラボから「ヨッパライ」の持つ本質である強さや熱い想いが凝縮されてはじけ出たようだ。いずれにしても、こんなすごいコラボレーションは見たことがない。
「加藤登紀子が歌うと“歌”が“文化”になる!」
きたやまと「ヨッパライ」のコラボの後は加藤のソロ・ステージで、告井延隆と2人だけのアコースティック・ライブだった。「ひとり寝の子守歌」「知床旅情」など名曲を淡々と歌うが聴き手のハートに忍び込んでくる浸食度はすごかった。
「出演者、お客さん全員による恒例のコラボレーションは「上を向いて歩こう」「あの素晴しい愛をもう一度」「故郷」だった!」
本編が終わった後は、出演者とお客さん全員によるコラボレーションで、これは〈フォーエバーヤング〉の“売り”になっていて、お客さんの最大の楽しみでもある。今回は作詞家本人とのぜいたくなコラボレーションの「あの素晴しい愛をもう一度」にお客さんは格別に満足だったようだ。そんな光景を見ながら、プロデューサーとして私は「来年もやろう」と決意するのだった。
これまでは5回、10回と目標を立てて頑張ってきたが、この年(66歳)になると、今を頑張った結果が“目的”にたどり着くと思っている。という訳で、今を頑張ろうと思う。その結果が〈第13回フォーエバーヤング〉につながるのではないでしょうか……。お互い“今”を頑張りましょう。
(文/富澤一誠)
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