第53回
THE ALFEE、甲斐よしひろのライブこそ大人のエンタテインメントである!
2017/06/08
それはコンサート、ライブにも言えると思う。正直に言って、50歳を過ぎると総立ちやあまりにも騒々しいのはしんどい。もちろん、たまには若いときのように立ち上がって盛りあがるのもいいが、本音としては良質な“大人の音楽”をじっくりと聴きたいということである。そんな〈大人のエンタテインメント〉を私は、コンサート、ライブに求めているが、それはおそらく私だけではないだろうと思う。
今回もいくつかのコンサート、ライブを見たが、私の考える〈大人のエンタテインメント〉にかなったのは2本あった。THE ALFEEと甲斐よしひろである。
「懐かしくて、なおかつ新しい『The KanLeKeeZ』!」
5月27日(土)、NHKホールで〈THE ALFEE Best Hit Alfee 2017 春フェスタ〉を見た。アルフィーらしいユニークで楽しいコンサートだった。
内容は2部構成になっていた。〈第1部〉は「The KanLeKeeZ」で〈第2部〉が「THE ALFEE」だった。
ふつうは「The KanLeKeeZ」と「THE ALFEE」はGS(グループサウンズ)とロックということでコンセプトが違うので分けてやるものだが、彼らは2つのバンドをひとつのコンサートでやってしまうところがすごい。
もちろん、THE ALFEEとThe KanLeKeeZは同じメンバーなので一緒にやっても不思議はないものの、きれいに使い分けて、なおかつ2組とも完璧にできあがっていることころが並ではない。
1966年は、いわゆるGSが忽然と現れた年。GSはザ・ベンチャーズが生んだエレキ・ブームを背景に、ビートルズやローリング・ストーンズなど主にイギリス発のロックの世界的な流行を引き金として起こった。シンプルで覚え易いメロディーと詞、明るく歯切れのいいリズム、パワフルなエレキ・ギターの響きで、GSはあっという間に広がっていった。ザ・スパイダース、ブルー・コメッツ、ザ・ワイルド・ワンズなどが先行し、続いてザ・タイガース、ザ・テンプターズ、ザ・ゴールデン・カップスなどの登場によって大ブームがやってきた。
その頃、青春時代を過ごした若者たちは、私を含めて、GSこそが青春時代のテーマソングだったのだ。THE ALFEEの高見沢俊彦、坂崎幸之助、桜井賢にとって、青春時代に憧れたのは、ザ・スパイダース、ブルー・コメッツ、ザ・タイガース、ザ・テンプターズなどのGSだった。彼らはGSにくぎづけになってバンドを始め、気がつけばプロになっていた。
「“大人のエンタテイナー”『THE ALFEE』を高く評価したい!」
「第2部」はTHE ALFEEだった。休憩の間に、The KanLeKeeZからTHE ALFEEへの早変わりも見事だった。同じメンバーなのに、なぜこれだけ完璧に他のバンドに変われるのか、これが彼らならではのすごさと言っていい。
恒例の〈グッズコーナー〉も、これはもう“芸”と言っていいほどの仕上がりである。ふつう〈グッズコーナー〉は宣伝コーナーだが、彼らの手にかかると、これもまたひとつのコーナーとして成り立ってしまうからびっくりだ。〈大人のエンタテイナー〉として高く評価したいものである。
「甲斐よしひろは“すごさ”が加わった素晴らしいシンガーである!」
〈甲斐よしひろビルボードツアー・シーズン3〉を、6月3日(土)にビルボード東京で見た。このアコースティック・ライブ、実は人づてに聞いていたので気になっていたのだが、たまたま見る機会を失くしていた。
〈大人の音楽〉 ・・・これが私が“旗降り”を務めているテーマであり、私流に言えば〈Age Free Music〉だ。要は〈演歌・歌謡曲〉でもない。〈Jポップ〉でもない。良質な“大人の音楽”を聴かせてくれる〈大人のエンタテイナー〉を望んでいるというわけだ。
ジャンルは関係ない。50代以上が楽しく聴けるアーティストならジャンルを超えてウェルカムなのだ。そんな中で、甲斐よしひろのアコースティックライブはまさにうってつけだった。しかし、それにしても、生ギターとウッドベース、バイオリンに、甲斐のギターとボーカルだけという小編成にはびっくりしてしまった。甲斐のバンド・スタイルからすればあまりにも小編成すぎると思えたからだ。
しかしながら、そんなことはなかった。甲斐のボーカルが素晴らしかったし、すごかったからだ。甲斐はもともと個性的で味わいのある素晴らしいボーカリストだが、今回はそこに“すごさ”が加わったようだ。というのはフォークの名曲「サルビアの花」をカバーしたが、それが絶品のできだったからだ。
この曲は女性デュオ・もとまろが1972年4月5日にシングルとしてリリースして当時20万枚を超えるヒット曲となったが、もともとのオリジナル曲は、この歌の作曲者である早川義夫(作詞は相沢靖子)のソロ・アルバム「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」(69年1月発売)に収録されていた“名曲”のほまれ高い曲だった。だからこそ、たくさんのシンガーたちにカバーされているが、この日に聴いた甲斐の「サルビアの花」はベストカバーであり、早川義夫のオリジナル曲に優るとも劣らない透逸の歌だった。
いい曲、イコール、いい歌ではない。いい曲は、それにふさわしい歌い手に歌われてこそ初めて“いい歌”となって、たくさんの人たちのハートを鷲づかみにすることができるのだ。その意味では、甲斐よしひろは“歌力”のあるすごいシンガーである。
(文/富澤一誠)
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