先攻の上野羽有音さん、おとなしめの客席にやや戸惑っていた？しかしSOLD OUTの会場を埋めた客席の約半数以上はTETORAファンの方たちだったはず。たかはしほのかと一緒に訪問した神保町のカレー屋さんや本屋さんのエピソードを披露しつつ、とても魅力的なハスキーボイスと練り上げられた楽曲でしっかりと会場を温めてくれました。 少しの休憩をはさんで登場したたかはしほのか。 ほほえみながら会場を見渡してギターをポンと鳴らす。この瞬間、明らかに会場の空気が変わった。地下のライブハウスに満天の星空を見た気がした。真夜中のしんとした空気の匂いを嗅いだ気がした。鳥肌が立った。１曲目の「高速道路」、リーガルリリーの「街の星」ツアーでは序盤だけの演奏から流れるように「GOLD TRAIN」に繋げていったが、この日はしっかりとフル尺を弾き語り。間髪入れず「宝石箱のように・・・」と歌いつなげるたかはしほのか。確信に満ちていた。息を呑んでただただ身動きすらできないでいる客席にいる私たちのこと、リアクションできないでいる私たちのこと、完璧に信頼してくれていると感じた。ときおり何かを慈しむように遠くに目線を飛ばすたかはしほのか。苦しそうに眉をひそめたかと思うと次の瞬間、とてつもなく優しい表情を見せるたかはしほのか。歌唱に、ギターに、作為が感じられない。とても自然。まるでたった今思いつい歌を気まぐれに歌ってみました、といったさりげなさで名曲を次から次へと繰り出す繰り出す。個人的には「たたかわないらいおん」～「明日戦争がおきるなら」で涙腺が崩壊してどうにもならなくなった。「せかいいちおおきなメロディー♪」声と言葉とメロディが塊となって押し寄せてきた。もうどうにもできなかった。 「何もかもに飽きてしまって。朝ごはんも昼ごはんも晩ごはんも。でも音楽だけには飽きることがなかった」そんなMCから最後の曲「リッケンバッカー」。弾き語りアレンジでもバンドアレンジでも永遠に色あせることのない「祈り」の歌。おんがくよひとをいかせいかせいかせ。飽きるほど何度もこの曲を歌っているであろうたかはしほのかは、しかし毎回本気でこのメッセージを客席に向けて放ち続けていた。本気で放ち続けていると感じた。たかはしほのかが音楽に取り組む姿勢、馬鹿正直なほど誠実、としか言い表すことできないと思う。 ---------- アンコールは上野羽有音さんと一緒に「小さな恋のうた（モンゴル800）」のカバー。本編とは打って変わって、なごやかに楽しく。たかはしほのかがハモリパート歌うの新鮮だった。それと上野羽有音さんのハスキーボイスとたかはしほのかの声、意外なほど調和してた。とても楽しかったです。とても。

たかはしほのか、アリ地獄説。 なにも押し付けない、引き寄せる事もしない。ただ近寄付いて転がり落ちてくる獲物を、緩いスロープの底で静かに待ち構えている。 落ちてきた獲物も、決して嚙み殺したりしない。じわじわと吸い取って、気づいた時には抜け出す気力を奪っている。 あんなもっさりした地味娘の静かな弾き語りに、まるでテルミンか二胡のようなまどろみの響きに、時の過ぎることすら忘れさせられるのは何故だ。